個人的な日記

ふりかえりとか、きもちとか。

磁気テープとフロッピーディスクの時代

 

私は高卒でとある企業に就職した。

 

 

勉強が好きではなく

高校2年の三者面談の時に

担任が、母の前で

 

 

「あなたは遠くの地方の短大くらいしか

入学できるとこなんて無いわ」

 

 

と言った。

 

 

私は母と共に

とても素直に、その言葉を受け入れて

「進学は無理だ」ということになってしまった。

 

 

担任は、私の事があまり好きではなかった。

 

勉強ができない。

提出物を出すのが遅い。

声が大きい。

巨人の応援歌ばかり歌っている。

賢くない。

見た目も可愛くない。

いまいち、パッとしない。

 

勉強が出来る子への態度は

私へのそれと全く違っていて

今思うと、あの先生は駄目な先生だった。

 

ただ、時々見せる

「ふふっ」と照れ笑いをするのは

ちょっと可愛かった。

 

 

でも、駄目だ。

 

 

遠くの地方の短大に、謝った方がいいと思う。

 

母と、あの頃の私にも。

 

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その会社は玩具流通をしており、なおかつ

ほにゃららブロック を作っている。

ナノサイズのそれは、結構人気が出た。

 

レゴナントカの方が人気なんだろうけれど。

 

そこの、経理部に配属された。

 

売上伝票や仕入伝票をデータ化するため

10人くらいでパソコンにデータを入力する。

 

9時から4時か5時まで入力した後、

プリンターから入力内容が一人分ずつ出力される。

 

まずは自分で伝票とその出力されたリストをてらし合わせ

間違えていたらペンで印をつける。

次は他の人のリストと伝票で、同じ作業をする。

 

自分の間違えていたところを

パソコンで修正する。

 

そういう仕事を毎日していた。

 

昔は、なんでも手動だった。

 

途中から私は

パソコンで

もう少し小難しいデータ処理の作業をしたり

その入力データをでっかい磁気テープに吸い上げたり

全国の支店から届いた伝票と磁気テープの処理やら

なんやらかんやら、処理していた。

 

途中から薄いフロッピーディスクになった気がする。

いや、磁気テープもフロッピーも同時進行だった気もする。

 

 

 

忘れた。

 

 

 

磁気テープや伝票のやりとりがあるので

週に2回訪れる運送会社との荷物の受け渡しもしていた。

荷物の中には、人事や営業の人達の書類もあるので

荷物が届いたら、会社の8階から1階まで

全部の部屋を回って書類を届けた。

 

郵便屋さんごっこは嫌いではない。

 

お偉いさんからそうでない人達まで

会社のあらゆる人と顔見知りになれたし

小声を言われることもあったけど

社内行脚は楽しかった。

 

磁気テープは、機械に入れる時に

テープが引っかかって変な音を立てると

上司の機嫌が悪くなるし

私だって磁気テープと上司に頭にきた。

 

伝票が多い日は気が遠くなる、

 

繁忙期になると

机に積み上げた伝票で、私が全く見えなくなり

皆に笑われた。

それを全部、めくってチェックするのは

木刀で素振り1500回やれと言われるのと同じくらい

最高に苦しいものだった。

 

 

みんなは定時で帰るのに

私と先輩は、男性社員たちと

20時とか21時まで残業した。

 

月給は同じ。

やっぱり見た目が悪いとこうなるのかな、と

本気で思っていた。

 

 

定時で帰る子達は、みんな可愛かったし。

 

いや、一緒に残業した先輩も可愛かった。

 

 

謎。

 

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でも、残業すると楽しいこともあった。

 

昼間は鬼のような顔をしている男性社員が

残業時間になると、ちょっと優しくなったり

疲れすぎてヘラヘラしてきたり

先輩も、彼氏の話をし始めたりして

人間観察には持ってこいの環境である。

 

しかも、先輩の彼氏は社内にいた。

 

会社の中には、そういう人が何組かいて

残業時間になると

誰と誰がどうなのか

その前は誰とどうだったのか

知らなくていいことまで聞かされ

巻き込まれないようにするのは大変だけれど

なんだか、面白かった。

 

そして、おなじく残業をしている

ほかの部署の同期の子とごはんを食べに行けたり

時々、おじさん達にスナックに連れていかれては

古臭い歌を歌って盛り上がったりもできた。

 

 

私は見た目が悪いので、若い人からは

全く人気がなかったけれど、

何故かおじさんウケはよく、可愛がられた。

 

会社の偉い人、と呼ばれるおじさんが

コンプライアンスギリギリアウトの冗談を言う。

 

私は焼鳥屋の娘なので、

そういうおじさんへの接し方を習得しており

お互いに毒になるようなことが無かった。

 

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今の職場は、ほぼペーパーレスだし

磁気テープやフロッピーディスクという言葉を口にするような時代ではなくなった。

 

業務上、私のところには伝票が発生するけれど

若干、あの頃と似たような部類の仕事をしている。

 

私自身の残業は、ほとんど無い。

 

キレている人もいない(たぶん)。

 

私より年上の方はほぼいないので

私がみんなに

 

「昨日生まれたばかりじゃん!」

 

と言う。

 

時代は変わってしまった。

 

今、フロッピーディスク なんて言っても

目が点になる子ばかりだと思うし

磁気テープを見たら、きっとどよめくだろうな。

 

コンプライアンスギリギリアウトの発言も

少しは減ったかもしれない。

 

いや、まだまだ数えきれないくらいある、か。

 

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あと20年したら、世の中はどうなっているだろう。

 

「キーボードで文字を打つ」ことが

笑っちゃうくらい古臭いことになっていたり

オフィスまで出社すること自体

時代遅れな世の中になってたりして。

 

 

人との関わりは、いつの時代も

あったかいものであって欲しいな。